春の終わりごろから初夏にかけ、この付近の山林で越冬したモリアオガエルが茂田沼のほとりへ産卵のために集まってきます。
モリアオガエルは木の樹木に登り、水面に垂れ下がった枝先に、白い泡の袋に包まれた卵の塊を産み付けます。卵は泡の中で孵りオタマジャクシになると、泡とともに水中に流れ落ちて沼の中で大きくなります。夏の終わりごろ、小さなカエルとなって林の中に帰って成長します。
卵を枝先に産むことや生育の様子が世界的に珍しく、学術研究上需要なことと、その成育地や数が急激に減ったため絶滅のおそれがありますので天然記念物に指定いたしました。
また、山奥の沼や池でなければ見られない珍しい卵の袋なので、古くからこれを見た人は延寿の福を享けると言い伝えられております。
(昭和34年10月7日 福島市教育委員会)
モリアオガエルは鮮やかな黄緑色の体を持ったアオガエル科のカエルで、日本国内にのみ生息している日本固有の種で本州と佐渡島のみに分布しています。
都市などに住む事は殆どなく森林地帯の林床や木の上で生活しています。 体長はオスが42-62mm、メスが59-82mmほどで、メスよりもオスの方が小さくオスは体長6cm以上になる事は殆どありません。
繁殖期の4月から7月にかけては生息地付近の湖沼や湿地に集まり、水面上にせり出した木の枝などに卵塊を産みつけます。産卵の際には、一匹のメスにオスが複数匹群がることがほとんどです。直径10~15mmほどの泡の塊内には300~800もの卵塊があり、その内部では複数のオスの精子が未受精卵を巡り激しい競争を行います。しばらく経つと泡の表面はやや黄色がかり硬化し始めます。約一週間でオタマジャクシが泡内部で孵化し、雨により徐々に硬化した泡が溶けだすと、オタマジャクシも水中に落下します。
オタマジャクシは1ヶ月ほどかけて前後の足が生えてカエルの姿になり上陸し、しばらくは水辺で生活しますが、やがて森林で生活を始めます。その後2~3年で繁殖のために生息地付近の湖沼や湿地に戻ってきます。